魚釣りで使う釣り針の種類は、多種多様です。
ほとんどの釣り針はアルファベットの【J】と、同じような形をしています。
ただし、この【J】型の中には、釣り針の種類それぞれに対して、多くの工夫が盛り込まれています。
釣り針は長年の試行錯誤の結果、ターゲットに合わせた形状で開発されているのが、一般的になっています。
もちろん対象魚を選ばない汎用性の高い釣り針もありますが、釣り針のことを知れば知るほどその奥深さを感じ、使う釣り針の選択基準についても幅が拡がることでしょう。
ここでは、そんな釣り針の基本的な知識について纏めてみます。
一般的な釣り針の形状と各部位の名称
まずは釣り針の形状と、各部位の名称を紹介しましょう。
上図は、海釣りで使う真鯛用の釣り針になります。
特別な形をしておらず、どちらかというと汎用性の高い釣り針の形状と言えるでしょう。
ほぼ同じような形のもにチヌ針があり、チヌ針は対象魚を絞らない一般的な釣り針としても良く使用されています。
それでは、釣り針の各部位の名称と、簡単な説明を付けてみます。
①チモト
針とハリスを結ぶための突起部分のことを【チモト】と呼びます。
チモトの形状には、一般的な叩き(左図)、管付(右図)などのほか、撞木、ギザ耳、凹凸の無い切りっぱなし、など多くの種類があります。
②胴(軸)
針の曲がり始める部分から、チモトの先端までの部分のことを【胴】、あるいは【軸】と言います。
胴の長さを胴長(軸長)と言います。
胴の形状には、一般的な【丸軸】や、強度アップや集魚効果を目的に軸の横からプレス加工した【平打ち】、【胴打ち】などがあります。
また、上図のように胴の途中に尖りを逆立てた形状のものを、【ケン】と言います。
ケンには1本ケン、2本ケン、あるいは背側と腹側に1本ずつケンがあるなど、幾つかの種類が存在します。
ケンはエサ止めとして働き、仕掛投入時のエサのズレを防ぐことができます。
③腰曲げ(胴曲げ)
チモトから胴を通り越して、逆側の曲がった部分のことを【腰曲げ】あるいは【胴曲げ】と言います。
④フトコロ
針先と胴との間の幅を【フトコロ】と言います。
また、フトコロは、腰曲げと先曲げの間の幅を表すこともあります。
⑤先曲げ
針先側の曲がった部分は【先曲げ】と呼ばれています。
⑥カエシ(モドリ)
針の先端手前にあって、針先の向いている方向と逆の方向に入れた尖りを【カエシ】と言います。
カエシは【モドリ】、【イケ】、【カカリ】、【アゴ】など多くの呼名を持っています。
エサが外れるのを防止したり、魚に掛かった針が外れてしまうのを防止する役割があります。
また、一般的な【カエシ】(左図)に対し、カエシがない針先を【スレ】(右図)と呼び、そのような針をスレ針と言います。
⑦針先
釣り針の先端部分のことを【針先】と言います。
また、カエシ(イケ)から針先までの間を【イケ先】と言いますが、イケ先には様々な加工が施されます。
代表的なものを幾つか示してみましょう。
針先から胴を見た場合、右側にひねり加工が施してあるのが【ヒネリ】(左図)、イケ先を内側(軸方向)へ軽く曲げた加工が【先曲げ】(中央図)、イケ先を内側(軸方向)へ大きく曲げた加工が【ネムリ】(右図)です。
釣り針の形状は、釣果に最も影響を与えるファクターの一つですので、 ぜひとも対象魚に合った釣り針を選択しましょう。
一番簡単な選択方法は、魚種別にラインナップされた商品の中から、その時々の釣りに応じた釣り針を選択することです。
釣り針の素材と加工(成型、メッキ加工、塗装)
釣り針の素材は、主に【鉄】、【鋼】、【ステンレス】の3種類になります。
この素材で釣り針として成型された後、焼き入れ(焼き戻し)や、研磨が行われます。
その後、釣り針の表面加工として、メッキ加工や塗装(焼き付け塗装を含む)が行われます。
この工程では【ニッケル】、【鉛】、【スズ】などが素材の中心になります。
メッキ加工や塗装を行うことで、釣り針の錆防止になります。
また、魚への警戒心の緩和や、逆に魚の関心を惹く効果に繋がります。
メッキ加工や塗装に関しては、釣り針の色に関するファクターでもありますので、以降の章でもう少し詳しく記載します。
釣り針の種類で、大きさ(サイズ)【号数】の基準は違う
釣り針の大きさ(サイズ)は、【号数】によって表示されています。
号数が大きいものほど、釣り針の大きさも大きくなります。
ただし、号数の大きさと、実際の釣り針の大きさは比例関係に無く、対象魚が異なる専用の針を較べれば、同じ号数でも大きさは全然違うのが分かります。
以下に、対象魚が異なる釣り針を比較した、一例を示してみます。
種類の異なる10号の釣り針
上図に示したものは、全て10号の釣り針になります。
釣り針の形状にも特徴のある4種類を取り揃えてみました。
もちろん針の形状だけでなく、高さ、幅、太さや、目には見えない重さなどについても、全くといって良いほど異なります。
それでも同じ10号という規格で販売されています。
これは、 過去の釣り針の開発過程に原因があるようです。
現在の大手メーカーが、新たにこの事業への参入した当時、既に漁師さんの間や、地方の釣り針メーカーの間で定着している規格がありました。
競合を図るためには、受け入れてもらい易くする為には、新たに独自の規格を押すのではなく、既に受け入れられているものに、大凡の規格を合わせる必要があったということです。
ただし、この説の真偽のほどは定かではありませんので、話し半分で受け入れてもらえば幸いです。
なお、現在でも、例え同じ種類の針でもメーカーによって規格は、多少異なっています。
更にいえば、同じメーカーの同じ魚種の釣り針においても、号数の決定に統一した規格はないのではないでしょうか。
大きさを表すファクターが多くある事と、釣り針の開発者の拘りが色濃く出るといった所でしょうか。
釣り人が用意する釣り針の号数の選択基準については、釣り人の知識や経験に委ねられるところが大きくなります。
釣り針の色には様々な効果が付加されている
釣り針の素材の章で記載しましたが、釣り針には成型後に、メッキ加工や塗装を施されたことで、色が付いています。
もちろん無加工のものもあり、これは素材の色そのものになります。
ここでは、釣り針の加工方法と色、色の魚に対する効果につい纏めてみます。
釣り針の色と発揮する効果
色 | 加工 | 効果 |
銀色(白) | ニッケルメッキ | 基本色であり、見た目は光沢のある銀で、白と表示されることが多い。 |
銀色 | 半田メッキ (鉛と錫) |
表面に艶がなく黒っぽい銀色で、銀色に較べて目立ちにくい感じです。 |
白銀色 | 錫メッキ | やや白っぽい銀色をしており、錆には非常に強い反面、非常に高価です。 |
金色 | 金色のメッキ | 銀色と同じく基本色で、集魚効果があります。 |
黒色 | 塗装 | 濃い色は魚の視認性が悪く、警戒心の高い魚に有効とされます。 |
NSブラック | ガンブラックの メッキ |
上記の黒色と比べ、メッキ加工なので光沢があり、錆には強い。 |
赤色 | 塗装 | 赤色は、特にロックフィッシュ(根魚)などに、高い集魚効果があります。 |
同化色 | 塗装 | 青、緑、肌色、ピンクなど、目立たないように、使うエサに同化させるような加工がされています。 |
ケイムラ色 | メッキ、塗装 | 赤、青、紫、ピンクなど様々な蛍光色を発する加工がされ、根魚や青物などに高い集魚効果があります。 |
上記の表を確認して頂ければ、特に説明を補足する必要もないでしょう。
釣り針に色を付けるのは、加工そのものが錆を防止する働きがあることと、魚に対する様々な効果を付加する役割を担っています。
釣り針の色に対する魚への効果については、大きく分けて2種類の効果があります。
・魚に対して目立つ色を付け、アピール(集魚)する効果
・魚に対して目立たない色を付け、警戒心を緩和させる効果
2種類の効果は、全く対照的な逆の効果になりますので、いずれの場合も対象魚を絞って、適切に選択する必要があるでしょう。
もちろん対象魚だけでなく、釣り場の状況、ポイントの深さ、その日の天候や潮汐、釣りを行う時間帯など様々な要因も関係してくることでしょう。
結局のところは、前項と同じ結論になりますが、釣り人が用意する釣り針の色の選択基準についても、釣り人の知識や経験に委ねられるところが大きいということになります。
今回は、普段あまり意識することのない、釣り針の基本的な知識について紹介しました。
釣りの経験が深い人には、すでに自分なりのスタンスを確立されている方が多いでしょうが、これから経験を積まれる方には、ここで紹介したような内容も念頭において、釣り針を選択して頂ければと思います。
少なくとも、適当に商品を購入し、無駄な経費と時間を費してしまうような可能性は、低くなるものと思います。
なお、今後は、釣り針の種類に対する特徴や特性、対象魚に応じた釣り針の使い分けなどについても、紹介できればと思っています。
以下に釣り針に関連するお役立ち情報や便利グッズの記事もたくさんありますので、是非ともご覧下さい。
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