海釣りをする時、釣果に影響を及ぼす大きな要因として潮(潮汐)があります。
潮汐は月の引力と地球の重力によって潮位が変動するもので、【大潮】、【中潮】、【小潮】、【長潮】、【若潮】と呼ばれる5種類の潮がある一定のサイクルで繰り返されます。
一般的な波止釣りでは、潮位の変動が大きくて魚の活性が高くなる大潮や中潮では釣果が上がり、逆に潮位の変動が少なく、魚の活性が低くなる長潮や若潮では、釣れにくくなるといった具合です。
この潮汐は環境要因に左右されない潮ですが、実はその他にも【赤潮(夜光虫)】や【青潮(苦潮)】、そして【水潮(二枚潮)】などと呼ばれる海の状況を表す潮というものが存在します。
潮汐には良し悪しがあるのに対して、これらの環境要因に伴って発生する潮は、特別なケースを除けば、いずれも釣果に悪影響を及ぼします。
ここでは、この赤潮(夜光虫)、青潮(苦潮)、水潮(二枚潮)というのが、どういった海の状況を表しているのかということについて紹介します。
海釣りで魚が釣れない赤潮(夜光虫)・青潮(苦潮)・水潮(二枚潮)
再度繰り返しますが、潮汐とは違い、赤潮(夜光虫)、青潮(苦潮)、水潮(二枚潮)という潮は、その場所の環境によって発生します。
そして、これらの潮が発生した釣り場では、釣果の方は期待できません。
ただ、潮汐とは違って、発生したその場所を避けて釣行に出ることで、この好ましくない状況を避けることは可能です。
それでは、これらの潮が発生するメカニズムと、なぜ釣果に悪影響を及ぼすのかについて、一つずつ確認してみましょう。
赤潮とは ~赤潮の発生(夜光虫の発生)と釣りへの影響~
赤潮については、学生の時に学んだ事を覚えている人も多いのではないでしょうか。
時折、赤潮の大発生をニュースで目の当たりにすることもあるので、何となく知っている人も多いことかと思います。
あるいは、極端な場合は、赤潮なんて日常茶飯事で珍しい光景ではなく、知っているのが当たり前という地域の方もいるでしょう。
赤潮が発生すると、写真のように海面が赤く染まるところから、その名が付いていますが、なぜそのような事が起こるのでしょうか?
この赤い部分の正体は植物プランクトンで、赤潮とはプランクトンが大量発生し、海面を漂っている状態で、このように海が変色する現象を指します。
主に赤色を帯びて変色しますが、実際は発生するプランクトンの種類によって色は様々で、例えば緑色のものはアオコなどとも呼ばれます。
赤潮は陸に近い浅い海で、海水が汚染されやすい湾内など閉鎖的な場所で発生しやすく、琵琶湖などの湖でも発生します。
赤潮が発生する原因としては、生活排水や工場排水によって、窒素やリンなどの海水の富栄養化が進み、これに合わせて春から夏の水温上昇や、雨が降って塩分濃度が低下することで、プランクトンが爆発的に増殖してしまうことで起こります。
赤潮が発生すると、その海域の水中の酸素濃度は下がり、そこに棲む魚介類にとっては死活問題となります。
海一面を覆うほどの大量発生ともなると、魚のエラにプランクトンがはりつくことも含め、大量死という結果を招くことになります。
このような状況ですから、漁業に与える影響はもちろんのこと、釣り人に取っても釣果が期待できるような状況ではないことは容易に想像できます。
ただ、赤潮というのは視覚的に分かるヒドイものを除いて、軽いレベルのものは季節によっては日常的に発生しています。
海釣りに出掛けて、悪い潮ではないのに釣果が上がらない、いつもと違った海の濁りを感じるなどがあれば、思い切って釣り場を変えてみるのも良いでしょう。
昼に赤潮として観察されるプランクトンの中に、夜になると光り輝くものがいて、これを夜光虫(ヤコウチュウ)と言います。
夜光虫もまた海洋性のプランクトンですが、海水の富栄養化との因果関係は少なく、発生の規模は小さく毒性も少ないので、あまり大きな被害はもたらさないと言われています。
夜光虫もまた、昼は赤褐色を呈し赤潮の原因となりますが、物理的な刺激に反応して光るので、上記の写真のように波打ち際で明るく光る様子が観察できます。
夜釣りに頻繁に出る人は経験があると思いますが、ラインや仕掛けが海面を叩く刺激でも、夜光虫は光ります。
ルアーフィッシングをする方にとってもお馴染の現象で、夜光虫がたくさん発生していると、刺激を与えないようにキャスティングするのに苦労したりしますね。
魚に警戒心を与えるという原因も加わり、夜光虫が発生している場所での釣りは、釣果が期待できないケースが多いでしょう。
青潮とは ~青潮の発生(苦潮の発生)と釣りへの影響~
赤潮に比べると、青潮というのはあまり耳にしない言葉ですが、これも元をただせばプランクトンが原因で水が青白く見える現象を指します。
青潮は苦潮(クシオ、ニガシオ)とも呼ばれ、その発生の過程の違いで呼び方を変えることもありますが、根本となるメカニズムは同じです。
富栄養化により大量発生したプランクトンが死滅して海底に沈殿し、バクテリアによって分解される過程で海中の酸素が大量に消費されます。
すると嫌気性細菌の硫酸還元菌が大量の硫化水素を発生させ、水中の酸素によって硫化水素が酸化され、硫黄や硫黄酸化物の微粒子が生成されます。
普通ならこれらの生成物は、徐々に拡散されて外洋水と合わさり消えて行くのですが、特殊な条件下では、これが海面まで引き上げられて、青白く観察されるという結果になり、硫黄独特の腐乱臭も漂います。
その条件の一つが沖向きの強風の発生で、表層付近の海水が強風により外洋へ流されてしまうことで、底層にいた上述の硫黄や硫黄酸化物の微粒子を含んだ水塊が上昇してくるといった具合です。
あるいは地形や潮汐によっては、外洋水によって底層水が直接持ち上げられるといったケースもあります。
いずれにしても、青潮(苦潮)が発生した海域では、低酸素状態、低水温、高塩濃度、硫化水素などの有毒物を含んだ状態となり、そこに棲む生物にとっては致命的な環境となります。
青潮は発生のレベル次第では、魚たちは逃げ場を失い、赤潮以上に生物の大量死を招くものであり、そうなると漁業や釣りどころの騒ぎではありません。
また、海釣りをしていると、魚が海面に浮かんで口をパクパクしていたり、元来は海底にいる魚が表層にまで浮いてきているのを目撃したことがある人もいると思います。
これは青潮発生のシグナルともとれ、このような釣り場では、少なからず青潮の発生、あるいは青潮が発生したケースと同様の海の状態になっていることが窺い知れます。
赤潮と同じよう、海釣りに出掛けて、悪い潮ではないのに釣果が上がらない、いつもと違った海の濁りを感じるなどがあれば、思い切って釣り場を変えてみるのも良いでしょう。
当サイトは釣りブログですので、赤潮や青潮の発生を釣果に及ぼす影響を中心に纏めていますが、ここで赤潮や青潮が発生するそもそもの要因を今一度記載しておきたいと思います。
そもそもの要因は我々人類が出す生活排水や工場排水が海水の富栄養化の状況を作り出し、そこに自然の環境要因が加わって赤潮や青潮が発生しています。
もちろん、赤潮や青潮の発生を抑制するために、排水処理の高度化や海底の低酸素状態を解消する研究、また、干潟や藻場などの環境保護など様々な取り組みに従事されている方々がいます。
それでも、まだまだ十分な成果が得られているという状況ではないのが現状ではないでしょうか。
自分自身を含めて、だから何ができるという訳ではありませんが、少なくとも釣り場におけるルールやマナーを守る事で、その場の環境の悪化を防ぐことくらいは出来ます。
「知る」のと「知らない」のとでは大きな差があり、本記事を作成するにあたり、色々と学べたことも多く、今後のフィッシングライフにも有用な時間となりました。
水潮とは ~水潮の発生(二枚潮の発生)と釣果への影響~
海釣りで釣れる魚の多くは、真水の環境の中では生きていけません。
汽水域を好む魚もいますが、それでも大幅な塩分低下は嫌います。
水潮というのは、大量の雨が降ったり、河川からの真水の流水によって発生する二枚潮のことです。
海水は塩分が含まれている分、淡水に比べて比重が大きいという特徴がありますが、この比重の異なる水同士は簡単に混ざり合うことがありません。
簡単に言うと、比重が大きい海水(重い水)は下に、比重の小さい淡水(軽い水)はその上に乗っかるという結果になり、海中では二つの層に分かれることになります。
大雨が降って大量の土砂を含む淡水が海へ流れ込んだ後などは、水潮の影響をより強く受ける河口付近では釣りにならず、その他の場所でも沿岸付近は比較的水深が浅いために、魚はより深場へ移動して活性を失うという、釣り環境としては好ましくない状況になります。
また、水潮(二枚潮)の二つの層では、塩分濃度の違いだけでなく、水温に違いが発生し、これらに起因して異なる潮の動きが発生し易い状況になります。
二枚潮の発生そのものが、釣りがを難しくさせるため、釣り人を悩ませ、釣果に悪影響を与える原因になります。
大雨が降った直後の釣りは、濁りが少ないような場所を選んで出掛ける方が良いでしょう。
ただ、振る雨の量次第では河口はアウトでも、少し離れた場所ではいつもより釣果が上がったなどといったケースがあります。
以上で、潮汐以外で釣果に悪影響を与えるケース、赤潮(夜光虫)、青潮(苦潮)、水潮(二枚潮)についての紹介を終わります。
これらの潮の発生は、環境に起因したその場所限定での潮なので、釣果が期待できないと思ったら、思い切って釣り場を移動してみてはいかがでしょうか。
なお、潮汐については、別の記事にて纏めていますので、こちらについてお調べの方は以下からご覧ください。
コメント
コメント一覧 (2件)
確かにここまででなくても、うっすら赤潮なんてよくあります。
いつも釣れる場所にこだわらず、こういうことを考えて
小マシな釣りをするのがいいのかもしれません。
釣りを始めた時はあまり思いませんでしたが、とにかく釣りは奥が深いです。
そして、そんなこともあるというのを身をもって教えてくれますね
相変わらず知識の整理に役立ちます。
ありがとうございます!
こんばんわ、カゴ師さん。
大阪近郊は水質が良くないので、これからの時期は、うっすら赤潮っぽいケースが増えますね。
釣り場を変えるのは、なかなか踏ん切りがつかないですが、早めの対処が時には功を奏します。
あるいは、経験的にヤバい時期と場所は、避けて釣行に出るのが良いですね。
当サイトには潮汐について、ごくごく簡単に紹介した記事があるのですが、これが連日結構なアクセスがあります。
春から新たな趣味として釣りを始める人がいるのが主な要因だと思っています。
これから釣りに取り組む方向けに、釣果の要因は潮汐だけではないということを知ってもらおうと本内容を紹介しました。
とは言っても、記事を書く時間よりも、色々と調べる時間の方が圧倒的に長く掛かりました。
私自身もまだまだ学ぶべきことの方が多いようです(⌒_⌒;
ガチろっくん