気候のよい時期の防波堤では、釣りを始めたばかりの初心者さんから釣り歴の長いベテランさんまで、多種多様な釣りを楽しんでいます。
とりわけ青魚の回遊の多く足場の良い波止では、ファミリーさんにも人気の高いアジ、サバ、イワシをターゲットとしたサビキ釣りや、投げサビキをメインに行われている方が多くなります。
都心近郊の人気の波止では、人の割り込む隙間もないほど込み合うような場所も多く、海面上にはそこかしこにサビキウキが浮かんでいる異様な光景も目にします。
こんな時、もっとも気を使うのは、周囲の釣り人さんの仕掛けとオマツリを起こしてしまうことではないでしょうか。
特に目に見えてオマツリを避ける努力ができるウキ釣りに対し、投げ釣りやブッコミ釣りでは道糸が海中に沈み、仕掛けはほぼ放置状態になることから、すぐ隣でウキを流されている方がいるとオマツリは避けられません。
オマツリはお互い様という面もありますが、繰り返せばやはり気まずさも大きくなり、好きな釣りも楽しめなくなるというものです。
今日は混雑した場所での投げ釣りやブッコミ釣りを行う場合のオマツリ対策である道糸沈めについて、紹介したいと思います。
道糸沈めでブッコミ釣りや投げ釣りでのオマツリを避ける
波止釣りが最も盛り上がる初夏から初秋にかけて、もっともオマツリのリスクが高いのは、仕掛けの絡みやすさの兼ね合いもあるサビキ釣りではないでしょうか。
足元へ仕掛けを落としこんでいる分には、ほぼ気を使う必要もないのですが、投げサビキを行っていると、他の釣り人さんの道糸の出ている方向や潮の流れを計算して、ある程度は仕掛けを狙った場所に投入する技術が必要になります。
それほど長い時間、仕掛けを流す必要のない釣りですから、隣の方の仕掛けに近づいたり、隣の方が投げるタイミングを計って仕掛けを回収すれば、混雑した場所でもオマツリするのを避けながら釣りを行えます。
まあ、そうは意識していても、ちょっとした油断やミスでオマツリは起こるもの、その時はお互い様ということで、ミスを起こした方が素直に謝罪して釣りを続ければ良いと思います。
ところが、意識をしていても、オマツリを避けるのが難しいケースがあり、それは、ウキを流している方の隣で、ブッコミ釣りや投げ釣りを行う場合です。
投げ釣りやブッコミ釣りでは、下図の破線で示したように、底に沈んだオモリと釣り竿の穂先を結ぶ直線状に道糸が位置します。
投げる距離が遠くなればなるほど、この道糸と海面上との角度は水平に近づき、より遠くまで道糸が底まで沈まずに、中層付近に留まることになります。
この時、隣でウキを流している方がいると、当然ウキは沖へ伸びたこの道糸のラインを越えていくことが出来ませんので、このラインに当たる前に仕掛けを回収せねばなりません。
しかしながら、先ほど書いたように道糸は水中に沈んでいますので、デッドラインが明確に分からず、穂先より出ている道糸の方向のみで判断することになります。
まだ三脚などを使って竿を立てていればある程度の判断は出来ますが、波止際に直に置き竿をして竿を寝かしている状態では、皆目見当が付きません。
ウキ釣りと投げ・ブッコミ釣りの方との距離が数メートルしかなく、特に針が多数付いた投げサビキ釣りなどでウキを流している場合は、いくらウキ釣りをしている方が注意をしても、まず確実にオマツリになるのは目に見えています。
ただし、このようなケースでも、オマツリを回避出来る方法は存在します。
ウキ釣りの方だけが注意して行うのだけではなく、投げ釣りやブッコミ釣りをする方も、少し気を聞かせることで、回避出来る方法です。
それは、【道糸沈め】を入れて、沖向きの水平方向へ張った道糸を、出来るだけ手前に落としこんで角度を調整する方法です。
上図で示したように、5号~20号程度のオモリを両側スナップ付サルカンで道糸に通し、道糸に沿って滑らせて底まで沈めます。
以下のような丸型のダブルスナップ付サルカンを使い、下側のスナップにオモリをセットし、投げ入れた仕掛けの道糸に上側のスナップをセットし、道糸上を滑らせていきます。
NTスイベル(N.T.SWIVEL) ダブルインター付タル クロ #5
あるいは、セットするのにスナップが少し硬いですが、以下のような道糸沈め用をうたった専用スナップも販売されています。
ささめ針(SASAME) P-200 道具屋道糸沈メ専用スナップ
そして使用するオモリですが、これはナス型や六角型のオモリの安価なもので良いでしょう。
使うオモリの重さは、水深や潮の流れの速さにもよりますが、浅い釣り場でチョイ投げ程度なら5号~10号を使います。
ジェット天秤を使うような天秤本格的な投げ釣りであれば、10号~20号が必要になります。
フジワラ(Fujiwara) カラーシンカー ナス 10号 夜光
沖向きに直線的に張られたテンションは、オモリの重さで波止側へある程度引き寄せられた状態で、道糸沈めを支点に2段階に分かれてテンションが掛かることになります。
これにより、道糸沈めのオモリが沈んだ場所より沖側であれば、隣の方がウキを流してもオマツリすることはなくなります。
ただし、道糸沈めには、幾つかのデメリットや注意点が存在し、どのような状況でも使えるという訳ではありません。
- 魚のアタリが穂先に出にくくなる
- 波止際に寄り過ぎないように調整する必要がある
- 仕掛けまでの間にシモリがあれば根掛かりする
- 深さのある場所では、オモリの号数が大きくなる
- 波止から水面までの高さがある場所では効果が薄い
それ故に、この道糸沈めを使うか否かは、投げ釣りやブッコミ釣りを行う方の考えや判断次第になるでしょう。
因みに、この道糸沈めを使う釣り手法は、普段投げ釣りを中心に行われている方であれば、ある程度周知の方法になります。
投げ釣りでは、航路や船道近くに仕掛けを投げる際に、仕掛けが船に巻き込まれないように道糸沈めを入れますが、これが道糸沈めのメインの使用方法で、その他では、強風で糸ふけがあまりにも大きくなるような場合にも使用されます。
決してオマツリを回避するためだけの使用方法ではありませんので、誤解の無きようにお願いします。
釣り場ではマナーを守ることが大事ですが、そのマナーの中には、他の釣り人との最低限の礼儀を通じた良好な関係や、相手のことを気遣う譲り合いの精神も含まれていると思います。
特に混雑した釣り場では、そういった他の釣り人に対する配慮も行わなければ、折角の楽しい釣行も気分を害して、台無しになりかねません。
相手に対して配慮することは、自分のプラスにならないこともあるとは思いますが、同じ釣り場で隣り合って竿を出すのも何かの縁と思い、お互いに気分の良い釣行になるように、簡単な挨拶や会話、ちょっとした気遣いの行動を心掛けたいものです。
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