多種多様な釣り針製品が販売される中、ある程度釣り歴のある釣り人でも、意外と知らない釣り針の種類の一つに【ネムリ針】という釣り針があります。
ネムリ針は海釣りで使う釣り針で、もともとは岩礁帯にクエや、深海にすむムツなどを釣るための針です。
最近では堤防釣り用のパッケージ製品としても販売されており、糸付き針はもちろん、胴付仕掛けや投げ釣り仕掛け、LTアジ仕掛けなどにも使用されています。
手にした仕掛けの釣り針を見た時に、針先がひん曲がっている(ネムリ形状)のに気付き、大丈夫かと心配になった人もいるでのはないでしょうか。
そう考えると、釣り針を選ぶ際に何となく見たことはあるけど、【ネムリ針】っていう名前そのものを知っている人が少ないのかもしれませんね。
それもそのはず、以下は糸付きネムリ針のパッケージ写真ですが・・・
この商品にはどこにも『ネムリ針』という用語が使われていません。
また、この製品の最大の特長はネムリ針を使用しているというのが売りのはずなのに、釣り針の特徴として「根掛かりしにくい」という記載以外は、特に説明はありません。
これでは、認知されにくいもの当然のことと言えるでしょう。
ところが、このネムリ形状を持つ釣り針は実は結構な優れものなのです!!
ただし、どんな釣りにでも対応できるわけではなく、メリットもあればデメリットもあるので、その特徴を知ったうえで使わないと逆に釣果を落とすことにもなります。
ここでは、そんなネムリ針について紹介しようと思います。
ロックフィッシュ(根魚)に最適なネムリ針の特徴
まず始めに独特の形状をもつネムリ針について確認してみます。
その後、ネムリ針のもつ特徴を知り、その特徴を踏まえた上で、ネムリ針をうまく利用する釣りについての理解を深めましょう。
ネムリ針とは~ネムリ針の形状~
釣り針の基本形状は、大きく分けて丸セイゴ、伊勢尼、袖、キツネ、そしてムツという5種類に分類されます。
前述のように、ネムリ針とはもともと深海魚であるムツを釣るための釣り針で、ムツ針の特徴としては腰曲げや先曲げが大きく、全体的に丸型形状となっており、その針先は軸方向へ大きく曲げられた内向き構造となっています。
その他の釣り針の針先はすべて、軸と平行方向、すなわち上向きになっているので、その異形さは他と大きく異なります。
ところが、近年ではこのネムリ形状が、ネムリや半ネムリといった扱いで、ムツ針以外の種類の釣り針にも多々採用されています。
写真はいずれもカサゴ用の丸セイゴ型のフックですが、横並べにして比べてみるとその違いがよく分かります。
左がネムリ針で、右が一般的な形状の針です。
見ての通り、ネムリ針の方は針先が大きく内側に曲げてあります。
ちなみに腰曲げと針の太さの違いは、右がメバル対応タイプのため、ここでは無視してください。
半ネムリなら同じ種類の針もあったのですが、ネムリ形状をはっきり認識できるものを選んで記載しているのでご容赦願います。
こちらは同じようにカサゴ針で、腰曲げが大きく、針先の曲げがもっと極端に感じられるものになります。
始めのパッケージ写真の中身ですが、これは結構えげつない形状をしていますね。
初めてこの針を手に取った人なら、「こんなのでちゃんと魚の口に針が刺さるの?」と心配になるのも頷けます。
ところが、実際に使ってみると、対象魚や釣り方次第では普通に釣れるのです。
ネムリ針の特徴
それでは、対象魚や釣り方次第では釣れるというのは一体どういうことでしょうか。
それを理解するためには、まずこのネムリ針の特徴について知っておく必要があります。
ネムリ針の特徴に簡単な説明も加えて紹介してみましょう。
ネムリ針は針掛かりが悪い
針先を内側に曲げているという事は、ハッキリ言ってエサを啄む魚の口への針の引っ掛かりは悪いです。
通常の形状をした釣り針の先端を指先で触れてみると、どのような角度で触れてもチクッと針に掛かります。
ところがネムリ針の場合は、フトコロ(針先と胴の間)の内側からでないと針が掛かりません。
理論的に考えてもと、魚を釣るのに引っ掛かりが悪いというのは致命的なようにも思える形状です。
ネムリ針の針掛かりの悪さは、どのように繕っても、仕掛けの作り方を工夫しても改善できる要素はありません。
まず、ネムリ針とは針掛かりが悪い針ということは認識しておきましょう。
針掛かりが悪い方が好都合!?
では、なぜ針掛かりをわざと悪くさせているのかってことですね?
それは、ネムリ針は基本的に餌釣りに使いますが、エサを深く飲み込む習性がある魚に対して使うからです。
すなわち、餌と共に丸飲みされた針が食道より奥で掛らない様に工夫された針なんです。
食道や口の中では掛かりにくく、口先に来ると軸が回転して針先が口先に掛かるようになっているというものです。
ネムリ針は掛けた魚をバラシにくい
その独特の形状から、針掛かりが悪い代わりに、一旦掛かると外れにくいという特徴があります。
例え細めの針でも、針先がしっかりと喰い込み、暴れても針穴が広がってしまうことはありません。
すなわち、針の抜けによるバラシを心配する必要が無いということです。
管理人もよくこの針を使いますが、抜けでバレた経験はほとんどありません。
ネムリ針は根掛かりしにくい
そして、針掛かりしにくいということは、根掛かりもしにくいということです。
本来の使い途が、漁礁周りを攻めるような釣りに使うので、カサゴやソイといったロックフィッシュ狙うのに、根掛かりしにくいというのは大きなメリットです。
これに合わせて、底ズレや岩肌の擦りによる針先の痛みが無く、根回りの難しい釣りに使うにも拘わらず、針先の鋭さは長続きし、ほとんど針を交換する必要がありません。
ネムリ針のメリットとデメリット
紹介したネムリ針のメリットとデメリットを纏めたうえで、ではネムリ針はどのような釣りで使えば良いのかを考えてみましょう。
ここではすでに上記で紹介したもの以外でも、管理人が感じたメリットとデメリットも付け足しておきます。
- エサを丸呑みする魚でも、口先に針掛かりする
- 一旦魚が針掛かりすれば、バレない
- 根掛かりしにくく、根周りを攻めやすい
- 針先の劣化が少なく、針交換の頻度は激減する
- 使用時の指刺し事故などに対する安全性は高い
- 繊細な魚や食いが細い魚には使用できない
- 釣れた魚の針を外しにくく、魚を弱らせる
- 針先の角度の問題から、エサが付けにくい
もうご理解いただけてるかと思いますが、ネムリ針のスペックを最も発揮できるのは、ロックフィッシュを対象とした釣りの時です。
なおかつロックフィッシュといっても、「エサの丸呑みOK」や「繊細な魚はOUT」ってことは、【カサゴ(ガシラ)】、【アコウ】、【ソイ】などが対象に相応しく、【メバル】や【アイナメ】には相応しくないということです。
船釣りを除けば、一般的にロックフィッシュ狙いといえば、波止際や橋脚回りを探る胴付仕掛け、テトラポッドでの穴釣り、岩礁地帯での投げ釣りといったところでしょう。
いずれもネムリ針を使うメリットはあると思いますが、その中でもおすすめとして【穴釣り】にネムリ針を使用する際の使い心地の良さは群を抜いています。
穴釣りは、岩と岩の間に仕掛けを落とし込み、仕掛けの上げ下げが頻繁で岩肌をこすって根掛かりすることも多い釣りです。
また、普通に釣っていてもエサを丸呑みして針を飲み込まれることが多いカサゴは、ネムリ針にはうってつけの対象魚です。
きっと今までの苦労が嘘のように改善され、新たな穴釣りの境地を堪能することができると思います。
ネムリ針の使用経験がない人、とりわけ穴釣りの根掛かり連発で心が折れてしまう方は、騙されたつもりで一度この針を使ってみて下さい。
穴釣りにおすすめのネムリ針
穴釣りに使うネムリ針は釣り具店で探しても、大型店でないとなかなか見つけにくいと思いますので、以下に2点だけおすすめ製品を紹介しておきます。
上記の画像で一例として挙げた製品で、かなりきつい針先の曲げになっており、根掛かり防止には抜群の効果を発揮します。
かなりリーズナブルで、探り釣りなどで自分で針を結ぶのが面倒な方には、お勧めの製品となっています。
信頼のがまかつ製品ですが、それほど腰曲げの強いネムリにはなっていません。
チンタメバルの半ネムリになっているので、エサに活きエビも使えますし、カサゴだけでなくメバルにも有効です。
根掛かり軽減効果はそれほど高くありませんが、まずはネムリ針を試しに使ってみようという方には、ちょうど良い製品かと思います。
ここではネムリ針が最も有効に使えるロックフィッシュを対象として紹介しましたが、半ネムリ形状程度であれば、一般的なウキ釣りや投げ釣りから大型の青物の釣りまで、様々な釣り針に採用されています。
製品パッケージにネムリと言う文言を見つけたら、本記事で紹介したメリットやデメリットを思い起こして頂ければ幸いです。
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